総合地質 8巻 1号 2024年12月25日発行


- 総説 -

現世と過去の収束域における水平および低角沈み込みの地質的影響と成因 [ウェブ閲覧用PDF 3.0MB] [高解像度PDF 9.5MB]

君波和雄
総合地質, 8巻, 1−24 頁

要旨

現世と過去の水平・低角沈み込みの特徴や地質的影響,成因をレビューする.現世沈み込み帯の約10 % は水平・低角沈み込みだとされている.水平沈み込みと低角沈み込みとは区別されることなく使用されてきた.しかし,両者は異なる点も多く,区別して扱うのが適切と考えられる.典型的な水平沈み込みは,チリのPampean flatslab,ペルーのPeruvian flat-slab,メキシコのMexican flat-slab である.Pampean flat-slab とPeruvian flatslab では,非震性海嶺が沈み込んでいる.低角沈み込みは,北米のカスケード,南部アラスカ,西南日本などに認められる.水平・低角沈み込みの成因には,多くの見解があり,現在も議論が続いている.それらは,1)浮揚性地塊の沈み込み,2) 上盤プレートの前進,3) マントル吸引力,4) 幅広い(> 6,000 km)沈み込み帯での長期間にわたる(> 80−110 my)沈み込み.これら要因の2つ以上が作用して水平・低角沈み込みが形成される可能性が高い.



- 論説 -

北海道野幌丘陵東方の後期更新世~完新世の長沼アイス1 号孔の珪藻分析 [ウェブ閲覧用PDF 2.0MB] [高解像度PDF 4.1MB]

嵯峨山 積
総合地質, 8巻, 25−32 頁

要旨

北海道中央部の長沼低地で掘削された長さ30 m のNGA-1 ボーリングコアから22 地質試料を採取し,堆積環境解明のために珪藻分析を行った.堆積相は5 ユニットに区分され,最下部のユニット1 はMIS 5e で,最上部のユニット5 はMIS 1 である.ユニット5 の堆積物からは縄文海進によりもたらされた海水生種~汽水生種の珪藻が多産した.洞爺火山灰が降灰した約109,000 年前には石狩低地の大半は海水や汽水に覆われ,長沼低地では泥炭地が広がっていた.



- 論説 -

北海道中央部千歳川水系舞鶴遊水地の第四紀末地質と2,000年前頃以降の環境変遷 [ウェブ閲覧用PDF 3.3MB] [高解像度PDF 41.7MB]

岡孝雄・星野フサ・安井賢
総合地質, 8巻, 33-58 頁

要旨

石狩川支流の千歳川水系の舞鶴遊水地は旧馬追沼の干拓地の一部である.同遊水地とその周辺地域について,ボーリング資料から地下地質を解析し最大25 mの厚さの沖積層の存在を確認し,その最上部についてAMS14C 年代測定・花粉分析・珪藻分析を行った.遊水地の南東部において地表下2 m までの部分について露頭観察と検土杖調査から,上位から,耕作かく乱土または盛土,腐植質泥炭層(泥炭層A),Ta-a(1739年降灰),灰色泥層(シルト質粘土~粘土;馬追沼堆積物),繊維質泥炭層(泥炭層B)および含有機物泥砂の層序が明らかになった. AMS14C 年代測定により泥炭層B以上の部分は奈良時代末~平安時代初期から現在までの1,200 年あまりの期間の堆積物であることが判明した.灰色泥層(馬追沼堆積物)にはその珪藻分析によれば1 ~ 15 % の海・汽水種が含まれており,縄文海進ピーク後の陸封湖沼の可能性が高い.遊水地周辺のハマナス砂丘付近を含めた花粉分析結果からは,2,000 年前頃以降,比較的温暖な環境で推移したが,江戸時代後半の1800 年前後にはやや寒冷な環境であったことが示される.



- 自由投稿 -

ライマンと北海道―日米文化交流の視点から― [ウェブ閲覧用PDF 2.3MB] [高解像度PDF 21.8MB]
関秀志
総合地質, 8巻, 59-73 頁

総合地質 8 巻1号内容イメージ


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