- 前言 -
総合地質の創刊にあたって [PDF link]
前田仁一郎
総合地質, 1巻, i 頁
特定非営利活動法人 北海道総合地質学研究センターはインターネット上で公開される電子ジャーナル “総合地質” (General Geology) を創刊いたしました.
北海道総合地質学研究センターは北海道内外の大学や研究機関・教育機関・地質関連企業などで地質学の研究・教育・実務に従事し, 退職の時期を迎えたものたちと迎えつつあるものたちによって2016年3月1日に設立されました. 電子ジャーナルの発刊は設立準備の段階から熱心に議論されてきた大きな目標の 1つであり, 今日このような形で成就するに至ったことは大変大きな喜びです.
総合地質がカバーする領域は層位学, 古生物学, テクトニクス, 岩石学, 鉱物学, 鉱床学, 応用地質学, 地学教育, 地学史, およびそれらの関連領域であり, まさに幅広く多様な general geology のジャーナルを目指しています.
総合地質の発刊は, 北海道総合地質学研究センター設立の 2つの目的, すなわち 会員がそれぞれの創造的活動を意欲的に継続するための環境を用意すること, また会員それぞれが培ってきた地質学の専門性を活用して社会に貢献するための環境を用意すること, の中に位置づけられていますが, 会員のみならず, 広範な人たちの情報発信と議論の場となって 地質学・地球科学とそれらに関連する幅広い科学の発展ならびにその領域の研究者・教育者・実務者の育成に寄与することを目指しています.
総合地質はもちろん高度な研究成果の投稿を積極的に歓迎しますが, むしろ, 世代交代にともなって失われかねない様々な資料・情報の引用可能なアーカイブとしての役割を果たすことに, その価値の 1 つがあるものと考えています. 1枚の地質図や1本のルートマップ, 露頭のスケッチや写真, 岩石や化石の標本写真や薄片の写真などに説明を付したもの, また野外調査手記, ユニークな着想・アイデアなど, それだけでは通常の学術誌では公表が難しいものの積極的な投稿を期待しています. あるいは未解決・未検討のままに残された研究テーマや重要な試料を次の世代に提示し, 継承者を募るという趣旨のものなども含め, 本当に書き残したいものを書き残すためのメディアとして総合地質を育てていきたいと考えています.
総合地質が地質学・地球科学の発展に微力ながら貢献できることを願い, また北海道総合地質学研究センターと総合地質に対する皆さまのご理解とご支援・ご協力を心から期待し, 創刊の辞といたします.
(2017年12月15日)
- 論説 -
北海道東部湧洞沼北東方のチョウブシ層の地質年代 [PDF link]
嵯峨山 積
総合地質, 1巻, 1–6 頁
要旨
北海道東部の湧洞沼北東方のチョウブシ層の露頭からシルト岩3 試料を採取し, 珪藻分析により地質年代を検討した. その結果, Neodenticula koizumi Akiba et Yanagisawa が多産し, Neodenticula kamtschatica (Zabelina) Akiba et Yanagisawa,Thalassiosira jouseae Akiba や Thalassiosira oestrupii (Ostenfeld) Porshkina-Labrenko s.l.などが随伴することから, 珪藻帯は Neodenticula kamtschatica-Neodenticula koizumii 帯 (NPD8; 3.5-3.9~2.6-2.7 Ma, Yanagisawa and Akiba, 1998) に相当することが明らかになった. 湧洞沼沖の水深 21 m で採取したシルト岩片も同様の珪藻帯で (嵯峨山ほか, 2006), 同層は陸域から海域にかけ連続して分布している.
- 論説 -
日高火成活動帯北部の高 Fe/Mg 迸入岩類の K–Ar 全岩年代 [PDF link]
前田仁一郎・米山 悟・中田周平・松田岳洋・山下康平
総合地質, 1巻, 7–14 頁
要旨
日高火成活動帯北部に露出する高 Fe/Mg 迸入岩類の K–Ar 全岩年代を報告する. 一の橋複合深成岩体の一の橋かんらん石含有黒雲母花崗閃緑岩と奥士別複合深成岩体の藤の沢石英モンゾダイオライトは それぞれ 20.9 ± 1.0 Ma と 21.4 ± 1.1 Ma である. 日高火成活動帯南部においても前期中新世のかんらん石斑れい岩体が分化した 高 Fe/Mg マグマの活動の存在を示すので, 日高火成活動帯全域において前期中新世 (20 Ma 前後)に高 Fe/Mg 火成活動が存在したことが示唆される.
- 総説 -
沈み込むスラブの垂直切断 [PDF link]
君波和雄
総合地質, 1巻, 15–34 頁
要旨
沈み込むスラブの切断は, 過去および現世において一般的に認められる現象であり, アルカリ岩やアダカイトの形成とも密接に関わっている. 本論ではとくにスラブの垂直切断に関して, その成因とそれらの具体的事例を紹介する. また, おもに地球物理学的データから, 断裂や切断に起因するフィリピン海スラブのセグメント化が指摘されている, それらの紹介とともにアダカイトからなる青野山単成火山群(島根県-山口県)とフィリピン海スラブの垂直切断との関係性を若干議論する.
- 報告・資料 -
札幌の失われた川を尋ねて-「水の都」札幌- [PDF link]
宮坂省吾
総合地質, 1巻, 35–45 頁
概要
本稿は,2017 年10 月13 日に北海道教育委員会主催道民カレッジ連携講座「失われた川を歩く」での配布資料を整理したものである.
いまから150 年前に開拓使が札幌を開いたころの風景を地図や絵図から探り, 明治~大正期に残された写真や回顧に基づいて失われた川と「水の都」の復元を試みた.
- 報告・資料 -
サハリン島スミルヌイフ(気屯)西方丘陵の上部新生界 [PDF link]
岡 孝雄
総合地質, 1巻, 46–70 頁
概要
サハリン島の西サハリン山地の東縁にはティム‐ポロナイスク断層の東側にススナイ低地やポロナイ低地などの新生代末に形成された構造盆地列が発達する. 南サハリン北部のスミルヌイフ付近の同断層は, ほぼ南北の主要セグメントと北西‐南東のそれが組み合わさり, それに応じて山地が鍵型状に突出し, その鍵型部に囲まれるように丘陵部が広がり, 前期中新世末~前期更新世の地層群が複向斜を成して分布している. 西サハリン山地とその周辺の第三系の堆積場の変遷から, 断層本体は後期中新世以前に活動したと考えられている. 複向斜内には西寄りに鮮新‐下部更新統の東傾斜の急立帯が, さらに東部には活断層帯が存在する. 急立帯は主に前期更新世後半に形成されたと見なされる. これらはティム‐ポロナイスク断層の一連の活動の産物で, スミルヌイフ付近では西から東へ断層活動がシフトしていることが明らかである.
・第7巻1号
・第6巻1号
・第5巻1号
・第4巻1号
・第3巻1号
・第2巻1号
・第1巻1号
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総合地質 (General Geology) は北海道総合地質学研究センターから発行されるアクセスフリーの学術雑誌 (オンライン版 ISSN 2433-7161, プリント版 ISSN 2435-2187) です. 会員以外の方からの投稿も積極的に歓迎いたします. 投稿を希望される方は 総合地質 の投稿規則 [PDF link] と原稿整理カード [PDF link] [Microsoft Word docx version] をご覧ください.
残部がある場合に限り, 総合地質 プリント版を実費で頒布しています. office@hrcg.jp 宛にお問い合わせください.