総合地質 3巻 1号 2019年9月20日発行


- 論説 -

完新世海面変動と珪藻分析による塩分指数の関係:沖積層ボーリングの例 [PDF link]
嵯峨山 積
総合地質, 3巻, 1–9 頁

要旨

塩分指数は生息域の違いに基づく珪藻群集組成を数値化したもので, 海生種が多産するほど値は5 に近く (高塩分濃度), 逆に淡水生種が多いほど1 に近く (低塩分濃度) なる. 沖積層の塩分指数について, 最大値となる (MSS) 層準と塩分指数が一時的に減少する (TDS) 層準が完新世海面変動とどの様な関係にあるのか, 石狩平野 (IS, TK, H16B-3, GS-HTB, RS), 猿払川中流域 (UH-SRN-1), 斜里平野 (Pt1) および濃尾平野 (GS-KZ-1) のボーリング資料を用いて検討した. MSS 層準は縄文海進高頂期 (約6,900 cal BP) に, TDS 層準はそれ以前の小海面低下期にそれぞれ相当し, 8.2 ka イベントに相当する可能性がある.



- 総説 -

北海道-サハリンの始新世火成活動は海嶺沈み込みに起因するか? [PDF link]
君波和雄・池田保夫
総合地質, 3巻, 10–30 頁

要旨

北海道からサハリンへと続く始新世深成岩類の造構場は, 現在も未解決である. 我々は, 始新世深成岩類がイザナギ-太平洋海嶺の沈み込みによって形成されたことを提案する. 北海道北部からサハリンの始新世深成岩類は, アムールプレートの縁辺に形成された付加体に貫入している. 深成岩の年代と周辺の付加体の年代との差は小さく, 深成岩類が前弧域に貫入したことを示唆する. これらの深成岩類は, 北に若くなる年代トレンドを示す (70 km/my). この事実は, アムールプレート縁辺の古海溝に沿って熱源 (イザナギ-太平洋海嶺) が北方に移動したことを示唆する. 北海道南部 (日高変成帯) の始新世深成岩類は, オホーツクブロック縁辺の付加体中に貫入した. この地域の深成岩類が北海道北部-サハリンの年代トレンドから外れるのは, 形成場が違った為と考えられる. 本論では, さらに環オホーツク海地域の後期白亜紀-古第三紀発達史のなかでの海嶺沈み込みの役割を検討する.



- 報告・資料 -

豊平川沿いの新第三系層序,藻岩山の形成史 および小金湯産カイギュウ化石 [PDF link]
岡 孝雄・古沢 仁・岡村 聡・青柳大介・重野聖之
総合地質, 3巻, 31–55 頁

概要

札幌市南区小金湯の豊平川河床で2001年に小学生により発見された海生哺乳類化石はカイギュウであることが分り, 札幌市では同市博物館活動センターを中心に「大型動物化石総合調査検討委員会」を組織して, 北海道教育大学や北海道立地質研究所などの協力の下に市民参加と公開を基本に復元・同定および産出層準の堆積環境解析と関連する新第三系層序の調査・研究を進めてきた. 本コースではその成果を基に新第三系の層序 (15 Ma~2. 5 Ma) および火山岩類などを豊平川沿いに観察する. 一方, 札幌付近では1990 年代中頃以降, 温泉ボーリングが盛んとなり, 1995年阪神大震災後は地震防災面で地震動と直下型地震の発生 (活断層の潜在) の可能性が検討され, 地震・微動アレイ探査や温泉・水井戸ボーリング資料の対比などにより地下構造解明が取り組まれてきた. 本コースに現れる地層群は札幌市街下の深層地盤を形作り, 間接的には温泉開発や地震問題を考える上でも重要である.



- 自由投稿 -

札幌の失われた川を尋ねて [PDF link]
宮坂省吾
総合地質, 3巻, 56–59 頁



- 論文紹介 -

君波和雄
総合地質, 3巻, 60–63 頁 [PDF link]

Tamblyn, R., Zack, T., Schmitt, A.K., Hand, M., Kelsey, D., Morrissey, L., Pabst, S. and Savov, I.P., 2019, Blueschist from the Mariana forearc records long-lived residence of material in the subduction channel. Earth Planet. Sci. Lett., 519, 171–181.

Kim, S.W., Kwon, S., Park, S.-I., Lee, C., Cho, D.-L., Lee, H.-J., Ko, K. and Kim, S.J., 2016, SHRIMP U–Pb dating and geochemistry of the Cretaceous plutonic rocks in the Korean Peninsula: A new tectonic model of the Cretaceous Korean Peninsula. Lithos, 262, 88–106.

Park, S.-I., Noh, J., Cheong, H.J., Kwon, S. and Song, Y., 2019, Inversion of two-phase extensional basin systems during subduction of the Paleo-Pacific Plate in the SW Korean Peninsula: Implication for the Mesozoic “Laramide-style” orogeny along East Asian continental margin. Geosci. Front., 10, 909–925.

Wu, J.T.-J. and Jonny Wu, J., 2019, Izanagi-Pacific ridge subduction revealed by a 56 to 46 Ma magmatic gap along the northeast Asian margin. Geology, 20, https://doi.org/10.1130/G46778.1.



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