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総合地質学・地球惑星科学に関するさまざまな情報や発言を掲載します. 学会・学界の動向や重要な研究文献の紹介, 書評, 災害に関する専門的的見解など, 当研究センター内外から投稿を受け付けます. なお, 当研究センターは掲載の場を提供するのみであり, その内容は知的所有権を有する投稿者個人の見解であり, 投稿者個人の責任に属するものです. 掲載を希望される方は e-mail 添付にて 当研究センター (office@hrcg.jp) までお送りください. 但し, 掲載の可否は 当研究センターによって独断的に決定されますので, 事前にご了承ください.


平成30年北海道胆振東部地震
一年金生活者の地震体験記

川村信人 (北海道総合地質学研究センター・札幌市清田区在住) 2018/09/13 掲載


(おことわり:以下の記述は,川村個人の経験・感想や憶測によるもので,科学的な調査の結果等に基づくものではなく,またもちろんHRCGとしての見解などを含むものではありませんので,ご了解ください.)

2018年9月5日の夜,私は珍しくススキノにいました.日本地質学会年会の開催で集まった気のおけない地質仲間の飲み会でした.飲み会からの帰途は江別市在住のT氏と一緒でしたが,話題はやはりお互い関与のある自然災害関係となり,私は“月寒背斜での直下地震とか冬になんて勘弁して欲しいよね”などと言っていたように記憶しています.


kawamura180913

(写真: 地震の余波冷めやらぬ自宅前から見た夕焼け雲.2018/9/8 18:00頃撮影.こういうきつい夕焼けはある意味不気味でもあるので,“不吉な予兆”と受け取られる場合もあるが...私には Mother Earthからの激励のように美しく見えた.)


その数時間後,私たち夫婦は,二階の寝室でいつもとは違う地震の揺れ(初動)に飛び起きました.階下に置いてあるスマホの緊急地震速報メールの着信音はなかったように思いましたが,あとから確認してみるとちゃんと3:08に着信していました.未明の熟睡時間帯なので,単に気づかなかっただけでしょう.その後,主要動が襲ってきましたが,驚いたのはその加速度の大きさと周期の短さです.グラグラ揺れたというのではなく,ドガガガッとでもいう感じでした.家の中ではドッカン・ガッシャーンという音があちこちから鳴り響き,恐怖で声も出ませんでした.揺れが収まったときには,住宅建物自体の損壊も覚悟していたほどです.また明らかに初動の時間があったので,震源は比較的離れた(=直下ではない)ところと判断され,震源付近の地域はもっと大変なことになっているだろうと気持ちが震えました.その時点で部屋の照明を点けようとしましたが,既に停電していました.窓から外を見ると周りは真っ暗でした.


まずは懐中電灯の明かりを頼りに階下に降りて状況を確認しようと思い,スマホを持ちました.Yahoo!を見ると,震源は胆振東部と出ていましたので,“あ~...あれが来たのか”と直感しました.暗い中,懐中電灯を持って家の周りをチェックしてみましたが,視認できる範囲ではなにも損壊がなかったので,とりあえず安心しました.そのまま5時の夜明けまで,家の中で一番安全と思われる場所(窓のない・支持構造の多い場所)に座って過ごしました.その間,震度3程度の余震が二,三度あったと思います.東日本大震災の時もそうでしたが,余震というのは心を冷やすいやなものでした.



それからの情報は,単3乾電池で動く小さなラジオで聞くNHK第一放送が頼りでした.スマホで見るネット情報は,思いのほか多くはなかったような気がします.停電は送電系統や変電施設の故障によるものかと当初思っていたのですが,そのうちそれが全道停電であることが分かりました.伝えられる情報もかなり限定的で,停電がどれだけ長引くかの情報はその日の夕方までほとんど伝えられなかったように思います.厚真火発のダウンによる連鎖的な“ブラックアウト停電”であることが分かったときは,かなりショックでした.


大きな誤算だったのは,スマホです.充電の問題はたしかにありましたが,私はモバイル電池も持っていたし,いざとなれば自家用車のUSBソケットから充電できるので,当面それほど深刻ではありませんでした.問題は,なぜかネット接続が次第にダウンしていったことです.もちろん末端の基地局がバックアップ電源の喪失でダメになる可能性は分かっていましたが,不思議なのは,スマホの4G通信の電波は元気に立っている(=末端基地局はOK)のにも関わらず,ネット接続が次第にNGになっていったことです.地震から夜が明けた午前中は大丈夫だったのに,その昼前からメール・ショートメッセージがダメになり,しまいにはウェブサイトの接続もまったくできなくなっていきました.電話機能も不安定で,つながらなかったり,つながってもすぐに切れてしまうなどの症状が出ていました.つまり,スマホの電源は大丈夫でちゃんと動いているのに,肝心の外部アクセス機能が死んでいるという状態でした.そんな状態でも,携帯電話会社(私はDですが)からのプッシュ通知などは普通に届いたりするのが非常に不思議でした.末端基地局の後ろ側にあるなにか(なんでしょう?)とインターネットとの間のどこかに問題が生じているような感じでした.結局,各種の情報はラジオだけが頼りで,IT社会のもろさを見たような思いです.


ちなみに,私の家に電気が復旧したのは,7日金曜日の夜8時過ぎでした.真っ暗な夜の二晩目を覚悟して布団にもぐり込んだ後の復旧だったので,ほっとしました.このタイミングは,伝え聞くところでは,“札幌で一番最後”の一つだったようです.私の居住地域は札幌市の縁辺部で,周りに特に配慮が必要な公共機関・インフラ施設・基幹病院もないので,おそらく最後に近い順番だろうと覚悟していましたが,予測通りでした.



次は,地震そのものについて書いてみます.ネットで確認できた震源情報は,『厚真町付近・深さ40 km』というものでした.先ほど“あれが来たのか”と書いた“あれ”というのはもちろん,『石狩低地帯東縁断層』のことです.厚真町付近ということだと,その活断層の地表トレースからだいぶ東になりますが,東傾斜の低角逆断層ですので,深さ40 kmならまあ,その深部延長ということで合っているのかな?と思いました.ただ,40 kmという深さ(のちに37 kmに訂正.USGSのサイトでは33 km)は尋常ではないような気がします.この深さは石英の“脆性-延性遷移境界”(深さ約10 km=内陸直下地震の頻発深度)を明らかに越えていますので,どういうメカニズムによる岩盤破壊なのかな?と考えると,私のような地震学の素人にはよく分かりません.どこかで見た情報では,石狩低地帯東縁断層のルート(根)の深さは25 km程度なんだそうで,これらの断層のルートというか成因・メカニズムは要するに何なんだろう? いずれ地震の専門家から見解が出てくるんだろうとは思いますが.


で,一市民として何が一番不安かというと,この9/6 3:08の地震が実は前震で,規模が同程度以上の本震が(熊本地震のように)仮に起こったとして,その震源深さがもっと浅い(例えば10 kmの)ところだったら,さらに大きな震度になり,より甚大な被害が再度発生するだろうというところにあります.または,この地震に誘発?されて石狩低地帯東縁断層の主部が浅いところで活動したら...これは考えるだけで怖いです.気象庁のコメントには“1週間程度”という注意期間が述べられています.今日(9/11)現在,地震発生から6日目に入ったわけで,余震活動も若干収まりつつあるみたいなので,そういう可能性は低いのではないかと勝手に思っている(思いたい)わけなのですが.



さて最後に,各種報道で全国的に有名になった“清田区の液状化”についてですが...同じ区ということで,いろいろな方々から,『お宅は液状化大丈夫?』という連絡をいただきました.結論から言うと,私の居住区の周辺ではまったく問題はありませんでした.実は15年ほど前,自宅からさほど遠くないところ(たしか清田区美しが丘)で,あまり大きくない地震が来た時に液状化現象が起こり,数棟の住宅が傾いたり沈下したことがあります.この時は,なんでこの程度の地震で自分の区で?と非常に不思議だったので,私も見に行った記憶があります.その後の情報では,これは旧谷地形を砂質盛り土で埋めた上に宅地を造成したところで起きた液状化現象で,きわめて限定的な出来事であるという話を読んだ記憶があります.それで,今回もその辺だろうと思っていたのですが,停電復旧後にテレビで見るとそこから少し離れた国道36号線をはさんで北側の里塚地区でした.テレビ映像で見る限り,“噴砂堆積物”が暗い色をしているのが少し不思議でした.のちに報道で火山灰質の盛り土という話も出ていましたので,それと何か関係があるのかもしれません.河川を暗渠化したところだという情報もありますので,まだ何が真実かわかりません.憶測はやめておきたいと思いますが,いずれにせよ『宅地の特殊な地盤状況』によるものでしょう.


私の自宅は,ゆるい丘陵地麓に拡がる緩斜面と低位段丘面?を切土した地盤の上に立っています.切土地盤であることは20年位前に隣家との境界塀が作られたときに出てきた“露頭”で薄い腐植土層の下位にすぐ支笏火砕流堆積物の周縁相と思われる不淘汰無層理硬質の厚い火山灰質層が存在することを確認しています.そういうわけで,この種の現象は起きにくい場所だろう,と勝手に思っています.


しかし正直言うと,自宅を購入した時,そんな地球科学的事情を考慮したという記憶はありません.当然ながら,宅地業者からもそういうたぐいの説明はまったくありませんでした.地球科学の関係者なのに,一生に一度の大きな買い物の価値に関わる地形や地質のバックグラウンドを全然気にしていなかったというか,そういう意識などなかったというか...おそらく今回の被災者の皆さんもそうだったのではないでしょうか.無理からぬことだと思います.そういう意味で,宅地の開発造成を行う企業やそれを監督する立場?の行政側にもう少し配慮があれば,と一市民としてはそう思っています.


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研究展望
後期ジュラ紀−白亜紀初期の石英質付加体砂岩と水平沈み込み

君波和雄 (北海道総合地質学研究センター・山口大学) 2017/01/14 掲載


大学院の頃から砂岩の組成を研究テーマの一つにしてきた. 多くの個人研究と共に科研費の総合研究もあって, 日本の古生代末から新生代の砂岩組成と後背地の地質特性が明らかにされてきた. 日本に分布する堆積岩の多くは付加体を構成しているので, その後背地は基本的に火成弧であり, 砂岩の主要構成物は火山岩起源である. しかし, ときに火山岩の岩片をほとんど含まない砂岩が出現する. これが比較的短期間もしくはローカルであれば, 限定された後背地からの供給もしくは後背地堆積場の特別な堆積過程などで説明できるかもしれない.


九州や山口県の秩父帯と美濃-丹波帯の後期ジュラ紀–白亜紀初期 (約 4000万年のインターバル) の砂岩は, 火山岩岩片をほとんど含まず, 石英質 (SiO2に富み, Fe2O3 や MgOに乏しい) である (君波ほか, 2009). こういった特徴を持つ砂岩がこの時期に産出することを知らなかったわけではなく, いくつもの先行研究がある. 少なくとも北海道から九州まで同じような特徴の付加体砂岩が産出する. これほど広く, 長期間にわたり石英質の砂岩が出現することは, 極めて奇異である. これに対する解釈として, 北中国地塊と南中国地塊の衝突域から砕屑物がもたらされたとの主張が複数の研究者により行われている. この見解の背後には, 権威主義, 寄らば大樹の陰といった臭いがするが, それはさて置き, この解釈ではいくつかの疑問が残る. 北中国地塊と南中国地塊との衝突は, 一般に230-210 Ma (トリアス紀後期) と推定されており, 石英質砂岩の産出イベントとは年代的に合致しない. また, 石英質砂岩の産出期にも付加 (沈み込み) は進行しており, 火山弧起源の砕屑物がどこにいったのかという問いに答えていない.


この不可解な現象に直面している頃に一つの論文に出会った. Sagong et al. (2005, Tectonics) である. ここでは韓国の中生代火成岩の時空分布を検討しており, c. 160-110 Ma (後期ジュラ紀-白亜紀初期) における火成活動の静穏期の存在を指摘するとともに, その原因として低角の沈み込みやマイクロコンチネントの衝突の可能性を提示していた. 韓国でこの時期に火成活動の静穏期があるなら, 中国大陸ではどうなっているのだろう, といった疑問が湧いた. 幸いなことに中国では 2000年代に入る頃からジルコンの U-Pb 年代の測定が急速に普及しはじめた. 最近では火成岩論文の多くに U-Pb 年代の測定データがつけられている. そこで, Tan-Lu 断層付近から南東側 (東西は吉林省から広東省) のジュラ紀-白亜紀火成岩の U-Pb 年代のコンパイルを始めた. コンパイルした地域の北東部 (第 1 図) における年代データを第 2 図に示す. 細部は Kiminami and Imaoka (2013, Terra Nova) に譲るが, 次のような火成活動の変遷が浮かび上がってきた: 1) ジュラ紀と白亜紀の境界を挟んで, ジュラ紀の火成活動と白亜紀の火成活動とに分けられる, 2) ジュラ紀の火成活動終了時期は, 慶尚盆地北縁から内陸側に向かって若くなる, 3) 休止期を挟んで前期白亜紀に始まる火成活動の開始期は, 遼東半島-吉林省東部から西南日本に向かって大局的に若くなる, 4) ジュラ-白亜紀境界を挟む火成活動の休止期間は, 遼東半島-吉林省東部から慶尚盆地にかけて海溝方向に大きくなる傾向にある.


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こういったタイプの火成活動場の時空分布は, 南米の非活動的海嶺の沈み込み場や北米のララミー期 (白亜紀末-古第三紀) のそれとよく類似する. これらの地域では, 沈み込むスラブが次第に低角化するのに伴って火成活動場が次第に内陸側に移動し, 水平沈み込みの完成によって広い地域 (水平スラブの上盤) での火成活動の停止が起こり, 次にスラブの高角化 (ロールバック) にともなって火成活動場が海溝側に移動してくる, とった解釈が一般に行われている. 西南日本から韓半島, 中国東部のジュラ紀-白亜紀に認められ火成活動場の時空変遷は, 沈み込むスラブのこういった形態的変化で説明可能である (第 3 図). 西南日本から北海道の後期ジュラ紀-白亜紀初期における石英質付加体砂岩の産出は, 韓半島での火成活動休止期に一致する. 韓国ではこの時期に活発な隆起運動が知られており, 深部 (12-28 km) で形成された前期-中期ジュラ紀花崗岩のアンルーフィングが進行している. 低角 (水平) 沈み込みによりスラブと上盤プレートとの密着力が大きくなり, 上盤プレートが圧縮場になることが知られている. 韓半島でのこの時期における広範な隆起・削剥は, こういった事情を反映しているのであろう.


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低角沈み込みモデルの検証にとって, 低角化の原因究明は重要である. 水平沈み込みを引き起こすようなスラブの低角化は, いくつかの原因でおこると考えられている: 1) 浮力の大きな海台・海嶺などの沈み込み, 2) 上盤プレートの海溝側への前進, 3) 大陸根 (continental root; lithospheric keel) が海溝近くに存在することによって生じるスラブと上盤プレートの間の吸引力 (suction force). ジュラ紀の付加体に含まれる緑色岩の多くは, 白亜紀の四万十帯に含まれる緑色が海嶺起源であるのと異なり, 海山・海台起原である. かなり大きな海台が前期–中期ジュラ紀に沈み込んだとする見解も示されている (例えば, Koizumi and Ishiwatari, 2006, Island Arc). また, 北中国地塊の root (keel) がジュラ紀に存在したとする論文も多い (例えば, Xu et al., 2004, Contr. Mineral. Petrol.; Menzies et al., 2007, Lithos). こういったことから, ジュラ紀に形成された低角沈み込みは, 海台の沈み込みと吸引力に起因するのではないかと推定される.


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Kiminami and Imaoka (2013) で提示したモデルは, 東アジアのジュラ紀-白亜紀火成活動の時空分布を説明する仮説であり, 具体的な事実に照らしてさらに検証されねばならない. 最近, Kim et al. (2016, Lithos) は, 韓半島に分布する花崗岩・火山岩の U-Pb 年代と地球化学を検討し, Kiminami and Imaoka (2013) とほとんど同じ結論を導いている. 今後の展開がどうなるのか注視しているところである.


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ブラタモリ「知床」撮影現場より

合地信生 (北海道総合地質学研究センター・斜里町立知床博物館) 2016/12/09 掲載


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NHKから最初の企画の相談が知床博物館にあったのは 6月の末でした. 8月にシナリオが出来上がり, 8月下旬に撮影の予定でしたが, 北海道を襲った台風の影響で撮影が急きょ 9月上旬に変更されました. 当初私は後半のウトロの地形と開拓の関係部分のみの案内人でしたが, 急きょ最初から案内をすることになってしまいました. 原稿を変更し, 再度現場検証をやり直し (何度船に乗ったかな), リハーサルの追加などしゃべることが苦手な私は大変な状況になりました. ブラタモリの収録はぶっつけ本番で, 取り直しはありません. タモリさんには番組の情報は一切知らせていません. カメラや音声を入れた案内人のリハーサルでは「タモリさんの番組ですから, タモリさんがしゃべらなくなると番組になりません. 先生は説明するだけでなく, タモリさんの会話を引き出すよう心がけて問いかけをしたり, 笑顔でタモリさんとの会話を楽しんでください.」とスタッフから言われました. またタモリさんに質問した際に返ってくる答についていろいろな場合を想定しての特訓がありました. 特に的確な答えがすぐに帰ってくると番組が予定のとおり進みませんから「その話は後でしますので, これについてまず考えてください.」とうまく流れを戻してくださいと言われました. 不器用な私が楽しく先を読んだ会話ができますか? 話す文章はカメラの横にカンペ (カンニングペーパー) が出ますが, 齢を取り視力は落ちる一方で, 文章は付け足した部分が多くて読みにくく, またスタッフの影になったりであまり頼りにはできませんでした.


収録 1日目はウトロから岬の間で何箇所か船を止め, 撮影しました. 断崖での柱状節理の説明はタモリさんの方がよく知っている様子でこちらはただ同意するのみでした. 評判が良かった片栗粉での柱状節理の実験は急に採用が決まり, スタッフが急きょ準備し, 当日やっと間に合いました. 私も見たのは本番でしたのでタモリさんの誘導に乗り, つい「パクッテいます」と言ってしまいました. タモリさんは以前知床にも来て船に乗ろうとしたそうですが, 天候が悪く乗れなくて残念な思いがあったようで今回の知床岬行きは大変楽しみにしていたようです. 日没ぎりぎりに岬の沖に着き, 自分のカメラで何度も撮影していました.


収録 2日目は小雨模様の中, ウトロ付近と羅臼の市街地の撮影でした. 最初の隆起現象が分かる露頭では, 布で横ずれ断層を起こし, そのしわで知床・国後の雁行配列を説明しました. 今回のメインの実験でしたので何回も練習し, 本番に臨みました. タモリさんは実に要領よく丁寧に実験し, 予定通りに進みました. タモリさんは絶好調でこちらの質問にはすぐに必要以上に詳しく答えを言ってしまうので, カンペは次どこから話を始めるかでとまどってしまいます. こちらも真剣に考えていると「先生かわいいネ」と茶化されました. 台本は全く当てになりません. それがブラタモリの面白さかもしれませんが. スタッフからは「何でもいいからしゃべっていてください. あとからの編集でどうにでもなりますから.」とずっと言われました. 放送ではナレーターの草彅さんがきれいに流れをつないでくれていますが, 現場は予想外の出来事ばかり.


今回の大きなテーマは「土壌化しやすい水冷破砕岩と土壌化が難しい陸上溶岩との境が世界遺産の境界」でした. 日本の海岸地形では海食崖が多く今までの番組で数多く見ているためか, タモリさんの海岸地形のセンスは抜群で, 水冷火砕岩の標高と陸上溶岩の標高差から水冷火砕岩の上に溶岩が流れていることをすぐに察しました. また, 放映ではカットされましたが収録では「溶岩デルタ」という専門用語を使い, 話を進めています. 私から「タモリさん, 溶岩がこのように流れた地形を知っていますか」と問うと, しばらくじっと考えて「溶岩デルタ?」と返答してきました. 「どうしてこんな専門用語知っているの?」 「昔読んだ本に書いてあったかなあ」. タモリさんは本当に地形や地質が好きなようです. 「笑っていいとも」のMCで旅行ができない時も, 地図がぼろぼろになるまで見て夢を膨らましていたとスタッフの人は話していました. 番組を見た人は, 事前に勉強しているのだろうと思われるかもしれませんがタモリさんの実力です.


最後に, スタッフから「合地さん, 最後に好きなこと言ってください」とけしかけられ, 「今まで知床で地質を詳しく取り上げられたことがなく, うれしい. これからも地質を番組で取り上げてください.」と全国の地質研究者を代表して ? カンペなしでしゃべってしまいました. かわいいアナウンサーの大江さんはスタッフからいじられ役で, 急にカンペで質問項目が出されたりして大変な役ですがニコニコして対応しています. さすがNHKのプロのアナウンサーです.


放送終了後, すぐにプロデューサーから好評という嬉しそうな声が携帯にかかってきました. 視聴率は 15%もあり, 歴代のブラタモリでも 5位ぐらいに位置しており, 長い恥ずかしい戦いは無事終わりました.


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「フォーラム」コンテンツ

2018/09/13:平成30年北海道胆振東部地震:一年金生活者の地震体験記, 川村信人


2017/01/14:研究展望:後期ジュラ紀−白亜紀初期の石英質付加体砂岩と水平沈み込み, 君波和雄


北海道総合地質学研究センターについて

特定非営利活動法人 北海道総合地質学研究センターは, 大学や研究機関, 教育機関, 自治体, 企業などで地質学の研究・教育・実務に従事し, 退職の時期を迎えたものたちと迎えつつあるものたちによって 2016 年 3 月 1 日に設立されました.


北海道総合地質学研究センターは, それまで行ってきた様々な創造的活動を退職後も意欲的に継続したいという私たちの希望をかなえる舞台に, また一方で, これまでに培ってきた地質学に関する専門性を活用し, 今後も社会的な役割を果たし, 私たちを育ててくれた社会への恩返しをするための舞台になることを目指しています. いわば, 退職地質屋の, 退職地質屋による, 退職地質屋 (と, もちろん, 我々の社会) のための (of the retired geologists, by the retired geologists, for the retired geologists and our community) 研究センターです. 所謂「人生100年時代」における退職者のアクティブな生き方の試みでもあります. 一方で, 積極的に院生・学生会員を受け入れており, 地質学の後継者の育成にも役立ちたいと考えています.


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